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自尊心からの解放ー幸福をかなえる心理学ー 要約と解説

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自尊心が低いことで悩む人は多いかもしれません。

 

その解決策として「自尊心を高めよう!」と思うのは自然な発想のように思えます。

 

しかし心理学者の新谷優さんは本書の中で「自尊心そのものを高めようとすると様々な弊害が起こる」という考えを述べています。

 

本の内容から、なぜ自尊心を追求することに弊害があるのか、幸せに生きるためにはどうしたらいいのかについてわかりやすく解説します!

 

自尊心を高めると人生がうまくいく?

 

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自尊心とは、自分自身を全体的に捉えたときに、自分を好ましいと感じ、価値ある存在だと思う程度のことであり、自己に対する肯定的な評価や感情のことです。自分に対する満足度のようなものですね。

 

自尊心が高い人は、自分のことをポジティブに捉えている人は、勉強、仕事、人間関係、人生の全てがうまくいっているリア充なんだろうな~って思いますよね。 実際のところはどうなんでしょうか。

 

心理学者ボーマイスターは自尊心の効果について調べた論文を集め、自尊心を高めると本当に人生がうまくいくのかどうかを研究しました。

 

良い点としては自尊心が高いと精神的に健康である傾向がみられたそうです。しかし、自尊心を高めると勉強、仕事、人間関係が上手くいくという因果関係は認められないことがわかりました。

 

自尊心を高めるメリットは思っているより少ないようです。

 自尊心が高いと自分の状況に対する満足度は上がるようですが、現実の人生が充実しているかどうかは別というわけですね。

 

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自尊心が高いキャラのNONSTYLE井上さん

自尊心が高い人が「俺は才能にあふれていて友達も多くて完璧な存在だぜ!」と思っていても実際には孤独な凡人ということもあり得るのでしょう。

 

逆に言えば自尊心が低いままでも勉強、仕事、人間関係がうまくいくことがあると考えられます。

 

特に日本では謙虚な姿勢が評価されたりするので、自尊心が低くても世渡り上手ということがありそうですね。

 

人生の状況がうまくいくと結果的には自尊心が高まるでしょうが、自尊心の向上そのものを目的にすべきでないというのがポイントです。

 

 

自尊心に囚われると大変なことになる

 

自尊心が低くても現実が上手くいくなら、いったい何が問題なのでしょうか。

 

心理学者クロッカーは問題は自尊心がどれほど脅威を受けやすいか、つまり、どれほど自尊心が失敗や困難に脆いかが問題だと主張しています。

 

例えば頭が良く、勉強ができることが自分の価値を規定すると考えているA君は学校のテストの点数が悪かったときに自尊心に脅威を受けます。

 

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「勉強ができなかったら俺なんてダメ人間だ」

 

しかし学業よりも甲子園に出場することに自分の価値を結びつけている高校球児B君は学校のテストの点数など気にしていません。

 

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「へっ!テストなんか気にしないぜ!」

 

例に挙げたように出来事によって変動する自尊心を状態自尊心といいます。

 

つまり自分にとって大切にしているものと結びついている自尊心のことです。

 

クロッカーはこの状態自尊心が問題を引き起こすと言っているんですね。

 

自尊心を結び付けている領域での成功は自尊心とポジティブ感情を高めますが、失敗は自尊心を下げ、ネガティブな感情を高めます。

 

しかし常に成功し続けることは現実に不可能です。

 

状態自尊心にしがみつくと、自尊心が下がることを避けようと様々な問題行動をするようになります。

 

勉強ができることに自尊心を結び付けているA君の例で説明します。

 

問題1チャレンジを避ける

失敗から自尊心を守るために、簡単な課題ばかり選ぶようになります。

 

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「明日は数学のテスト、、そうだ!100マス計算をして計算力を高めよう」(問題を間違えるのが怖い)

 

問題2失敗の口実を作る

 

敢えて失敗の種をまいておくことで失敗を自分の能力不足ではなく別の要因が原因がと思えるようにします。

 

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「昨日徹夜でゲームしてたわ!全然勉強してねーわ!」(だから点数が低くても俺が無能ってことじゃないからな!)

 

問題3失敗したら周りを攻撃する

 

失敗の原因が自分にあると思いたくないため、責任を周りにおしつけ攻撃しだします。

 

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「この俺が20点だと、、、!? テスト中お前の鼻息がうるさくて集中できなかったからだ!」

 

状態自尊心に囚われ、自分を守ろうとするとこのような問題行動をしてしまうのです。

 

でも自分にとって大切なことはどうしても自尊心に結びついていますよね。

 

いったいどうしたらよいのでしょう。

 

自尊心から解放される考え方

 

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自尊心の脆さを軽減する考え方のひとつは自分は学び・成長できるという信念:成長マインドセットです。つまり自分は固定されたものではなく失敗しても変わっていける存在なのだと考えるのです。

 

これは「やればできる!」の研究で有名な心理学者キャロル・ドウェックが提唱した考え方です。

マインドセット「やればできる! 」の研究

マインドセット「やればできる! 」の研究

 

 自分は生まれたときから変わらない存在だ、努力しても無駄だと考える人は成功・失敗に大きな影響を受けるため自尊心も不安定になります。

 

しかし自分の能力や性格は環境や努力などによって変化しうると考える人は成功・失敗にそれほど影響をうけません。

 

失敗しても「また次に頑張ればいい」と考えることができるのです。

 

こうして自尊心が状況に左右されず安定するというわけですね。

 

 

自尊心の代わりに追求すべきもの

 

自尊心を追求するべきでないなら、幸せに生きるために本当に追求すべきものはいったいなんでしょうか。

 

クロッカーらは自尊心の追求とそれに代わる考え方としてエゴシステムとエコシステムという概念を提唱しました。

 

エゴシステムとは自分のニーズを中心に置いた動機付けシステムです。自分はどう見られているか、自分は周囲の人から好かれているかなど、常に自分が中心であり自分がどう評価されているかに注意を向けています。 


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エゴシステムでは、自分が必要とする評価・承認・愛情・サポートなど自分のニーズを満たすことを最重要としています。

 

 

一方、エコシステムとは、自分を他者との繋がりの中に位置づけた動機付けシステムです。エコシステムでは他者のニーズは自分のニーズをと同じくらい重要であると考えます。 


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他者の幸福に貢献することで、結果的に自分の幸福、そしてシステム全体の幸福につながると考えます。

 

エゴシステムとエコシステムの根本的な違いは、自分のニーズのみを追求するか、他者のニーズも自分のニーズと同様に重要と考えるかです。

 

他者に親切をするとき行動は同じでもそれがエゴシステムによるものなのかエコシステムによるものなのかによって他者に与える影響が異なると考えられています。

 

エゴシステムによる親切である場合、結局自分のための行動であるため自己満足で終わってしまうことがあったりします。

 

例えば恋人に対して、自分は最高のパートナーだと思ってもらえるように毎日豪華なお弁当を作ったとします。しかし相手はそれを重く感じ心理的に負担になってしまったり、忙しくて豪華なお弁当は食べる時間がなかったりすることがあります。

 

逆にエコシステムによる親切である場合、本当に他者のことを考えて行動するため、結果的に他者から感謝され、自分が高く評価されるようになります。

 

上の例だとお弁当作りを相手が負担にならないくらいの頻度にしたり、相手のスケジュールに合わせてたまには栄養ドリンクとおにぎりにしたりなど。

 

このようにエコシステムにおいて自己評価を気にするのではなく相手を思いやる気持ちを優先させると結果的に自己に対する評価が高まるのです。

 

幸せの3要素

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また、エコシステムの考え方は心理学者デシとライアンが提唱した幸せの3要素を満たすことができます。

 

その一つ目は自律性、つまり自分の行動を自分で決めることです。エコシステムでは自分から他者へ働きかけることから始まるため自律性が高いと言えます。

 

幸せの3要素の二つ目は有能性、つまり自分で決定した行動を実行する能力があること、またはそのような能力があると感じられることです。

 

エコシステムでは、自分の行動が他者の幸せに直接貢献していると思っているので、有能性のニーズも満たされます。

 

さらに他者のために貢献するには自分の能力を伸ばすことが必要になっているため成長マインドセットを持ち努力によって実際に能力を伸ばしていくことができます。

 

幸せの3要素の三つ目は関係性、つまり人と良好なつながりを持っている、またはもっていると感じられることです。エコシステムでは他者の幸福のために貢献しようとするので、他者との関係も必然的に良くなります。

 

以上のようにエコシステムによって幸せの3要素を全て満たすことができるのです。

 

まとめ

 

自尊心に固執し、自尊心を守るため必死になると様々な問題行動を起きます。

 

また自尊心そのものを高めようとしても幸せにはなれません。

 

エコシステムの考えを取り入れ、他者の幸福のために行動することで結果的に自分の幸せにつながるという好循環が生まれます。

 

自分の行動は自分のイメージあるいは自尊心を高めるためにやっているのか、それとも心から他者へ貢献したくてやっているのか、注意を向けてみる必要がありそうですね。

 

 

自尊心からの解放: 幸福をかなえる心理学

自尊心からの解放: 幸福をかなえる心理学

 

 ↑より詳しく知りたい方はぜひ読んでみてください。

 

ブログに乗せた以外で個人的に気に入ったポイントは自己愛と自尊心の違いなど、類似概念との違いが詳しく乗っていた点、潜在自尊心と顕在自尊心など自尊心の種類について載っていたところです。

 

心理学を学ぶ大学生、大学院生はもちろんのこと、わかりやすいので自尊心に興味がある一般の方にもおススメです。